下照比売(シタテルヒメ)「日本神話の世界」

下照比売(シタテルヒメ)はオオクニヌシと宗像三女神のタギリヒメとの間に産まれた子であり、名前にある「下照」とは「輝くばかりに美しい」「辺り一面が輝くように美しくなる」といった事を意味しており、天孫降臨神話の中に出てくるアメノワカヒコと結婚し、妻となった事で知られている女神です。

シタテルヒメの夫となるアメノワカヒコは天孫降臨神話の中で国譲りの交渉の為に地上に降りたちますが、交渉相手となるはずのオオクニヌシの娘であるタギリヒメと結婚し結果的に高天原を裏切る事となります。
アメノワカヒコの様子を伺いにいった使者が射抜かれた事によって裏切りに気づいた高天原のタカミムスビはアメノワカヒコに向かって使者を射殺した矢を投げおろし、その矢が床に寝ていたアメノワカヒコに刺さった事によってアメノワカヒコは亡くなりますが、その死を悲しんだシタテルヒメは弔いの為に8日間も歌と踊りを捧げ続け、その泣き声は高天原にまで届いたと伝えられています。

その後、アメノワカヒコを弔う為に高天原からアメノワカヒコの家族が地上に降りてきますが、そこにシタテルヒメの兄であり、雷神でもあるアジスキタカヒコネがあらわれます。
このアジスキタカヒコネとアメノワカヒコが瓜二つであった為、アメノワカヒコの家族はアメノワカヒコが蘇ったと言って喜びます。
しかし、死人であるアメノワカヒコと間違えられたアジスキタカヒコネは不快感を示して怒り、弔いの小屋を神度剣(かむどのつるぎ)で切り倒して去ってしまいます。
直後にシタテルヒメはアメノワカヒコの家族に和歌を捧げ、和歌の内容からアジスキタカヒコネの正体を知る事になるのでした。

尚、鳥取県にある倭文(しとり)神社の社伝にはシタテルヒメが出雲国より訪れて人々に薬の知識や安産の為の知恵、農業の指導を行ったと記されています。